共同広報推進室
共同広報推進室作業療法士
作業療法士の視点-認知症を深く知る
みなさん、こんにちは!広報の新井です。
先日、東淀川区地域包括支援センターで行われた自立支援型ケアマネジメント小会議にて、リニエ訪問看護ステーション四ツ橋の作業療法士 山本(以下、山本OT)がケアマネジャーの方を対象に認知症の理解を深めるミニ講座を行いました。
そこで山本OTがお伝えした内容を、記事でも詳しくお届けしたいと思います。
1.認知症とは?
様々な脳の病気によって、脳の神経細胞が機能しなくなったり働きが悪くなったりして、記憶や判断力などの認知機能が低下し、社会生活に支障が出ている状態です。
認知症と診断される方の数も年々増加しています。
2.認知症と加齢の違い
記憶や判断力などが低下してしまうことは加齢でも起こります。
しかし、認知症と加齢には大きく異なる部分があります。
加齢は、体験したことの一部を忘れてしまうことに対し、認知症の場合は、体験したこと自体を忘れてしまうということです。
言い換えれば、本人にとっては、身の回りで起きた出来事が「そもそも何も起きていない」ことになるため、話の辻褄が合わなかったり、先ほど済ませた行動をもう一度行ったりするのです。
また、認知症の場合は、気持ちの面にも、感情のコントロールが難しくなるといった症状が現れます。
3.認知症の種類
認知症は、①アルツハイマー型認知症、②血管性認知症、③レビー小体型認知症、④前頭側頭型認知症の4種類に分類されます。
①アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、タンパク質「アミロイドβ」が脳の記憶を司る海馬に蓄積され、脳神経が機能しなくなることで起こります。
4つの認知症の中でも最も多く、認知症患者の約7割がアルツハイマー型と診断されています。
②血管性認知症
高血圧や糖尿病など血管に病気を抱え、それによって起こる脳梗塞や脳出血などが原因で、脳の神経細胞が機能しなくなります。
手足の痺れや言語障害や嚥下障害などが見られることも多くあります。
③レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、タンパク質「レビー小体」が脳に蓄積し、神経細胞が壊死してしまうことが原因です。
一番の特徴は、物を見て認識する後頭葉が機能しにくくなるため、幻視や手の震えが出現します。
④前頭側頭型認知症
前頭葉や側頭葉を中心に異常なタンパク質が蓄積すると言われ、脳が萎縮することによって起こります。
抑制が効きにくくなったり怒りっぽくなったりする、社会的に不適切な行動をしてしまうといった症状が現れ、難病にも指定されています。
4.認知症の症状
認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。
中核症状とは、物事を覚えたり時間や場所を認識したりすることに支障が出る記憶障害、日時がわからなくなってしまう見当識障害、判断力の障害、どのようにこの作業を計画立てて行うかといった実行機能障害、ペットボトルの開け方がわからなくなるといった失行、物の認識が難しくなる失認、言葉がうまく出てこない失語などの症状を言います。
これは、脳細胞が働かなくなり脳機能が低下することによって現れます。
私たちは、この中核症状に焦点を当てたリハビリも行いますが、脳の機能が損なわれているため中核症状自体にアプローチすることは難しく、焦点を当てすぎると上手くいかないことも多くあります。
対して、周辺症状とは、中核症状をもとに何らかのストレスが加わって起こる症状です。
中核症状による日常生活への支障から、今までできていたことができなくなってきたという不安や、本人のプライドが傷つくことにもつながります。
それが原因で家庭や近隣の方との人間関係にも影響が出てしまい、ストレスになり、体調を崩していくという悪循環が生まれます。
その結果、暴言や暴力、物が盗られた、徘徊といった周辺症状が現れてしまうのです。
5.作業療法士の関わり方
作業療法士は、周辺症状が現れている本人にとって、何がストレスになっているのかを掘り下げていきます。
作業療法士が行う作業療法は、基本的な動作能力をはじめとする三つの能力を維持・改善し、その人らしい生活を組み立てていくことを目指します。
基本的動作能力は体を動かし感覚を受け取ること、応用的動作能力は食事、排泄などのADL(日常生活動作)に着目し、社会的適応能力は地域活動に参加することを見据えています。
生活での動作すべてが「作業」であり、「作業」を通して、その人らしい生活を作っていくことを目指しているのです。
そのため、本人を取り巻く環境の中で、本人がストレスだと感じているものを探り、その要因を取り除きながら、その人が望む生活や日々の取り組みを一緒に考えていくことを大切にしています。
6.認知症の方と関わる上で重要なこと
認知症の方と関わる上で最も重要なのは、本人が今までにどのような生活を送られてきたのか、今までにどのような役割を担い、どのような人生を歩んでこられたかを知ることです。
住んでいる環境などの物的環境と本人と関係する周囲の人たちといった人的環境の両面から探っていきます。
何がストレスになっているのかを考えることが大切です。
7.大切にしている目標設定
認知症の方にとって、言われたことや行動したことの内容は記憶に残りにくくても、「嫌な気持ち」「不安な気持ち」など、その時感じた感情は残ります。
ただ、何があったかがわからないため、何となく嫌な感じに残っている気持ちが周辺症状につながってしまうのです。
そこで、認知症の方との関わりで大切にしている目標設定は次の4つです。
①なかなか上手く言えなくても、ご本人のやりたいことは何か。
②できないことに目を向けるのではなく、担ってもらえる役割は何かという点に着目し、ご本人のプラス面を活かせる方法を考える。
③暴言、暴力、徘徊など周辺症状の原因を考える。
④ご家族の話を聞き、ご本人との関わり方を助言する。
認知症を正しく理解し、本人に現れている周辺症状の原因を考え、和らげることで、本人やご家族のしんどさが少し軽減できるかもしれません。
作業療法士の知識や視点を踏まえ、山本OTがお伝えしたお話が支援者の方々にとっても何かのヒントになればと思います。
地域生活では、それぞれの専門職がその専門性を活かし、ご本人やご家族を支えていきます。
ご本人を中心に多角的に考えていけるよう、日頃からの支援者同士の顔合わせや連絡の密度などが大切です。
今回のように、地域の中で多くのケアマネジャーの方とお会いできたことも貴重な機会だったのではないかと感じます。
今後も地域に貢献する療法士、看護師の視点をお伝えしていきます!
共同広報推進室 新井