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リニエ訪問看護ステーション二条

理学療法士

医療・介護を支える「情報」

かなえるリハビリ訪問看護ステーション都・理学療法士の植嶋と申します。
ここ3年、我々は新型コロナウイルス感染症に振り回され続けていますが、真偽を問わず溢れる様々な情報に振り回された方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、医療や介護に関する情報について考えてみたいと思います。
堅苦しいと思われるかもしれませんが、肩肘を張らず気楽にお読み頂ければと思います。

…といいながらさっそく堅苦しいのですが(笑)、まず「エビデンス」という言葉を紹介させて下さい。
エビデンスとは、例えば「ある病気の治療には薬Aと薬Bのどちらがよいか?」といったような、治療などを決める際の客観的な根拠となる情報です。
客観的な根拠とは、専門家の審査で認められた研究の結果を指します。
近年では医療においてエビデンスが重視され、「根拠に基づく医療」という言葉が盛んに聞かれるようになりました。

ただ、お読みの皆様はこのように思われるかもしれません。
「なんだか堅苦しい。目の前のご利用者が良くなればそれでいいじゃないか」
「それぞれのご利用者を見ずに、研究結果だけで対応を決めるのか」
実は、私も現場で働き始めた当初はそのように考えていました。
ただ、このようなご意見に少しだけ補足をさせて下さい。

そのためにひとつ、想像してみましょう。
あなたは来月、あなたにとって大切なひと (ご家族やパートナー、ご友人など) に感謝の思いを伝えるため、奮発して高級な寿司屋でご馳走しようと考えました。
探したところ寿司屋Aと寿司屋Bを見つけましたが、寿司の値段が全く同じで、高級な寿司屋など行ったことがなく詳しいことは分かりません。
そこで、テレビでもよく取り上げられるミシュランガイド (ミシュランの厳正な審査で認められたレストランなどを紹介するガイドブック) を見ると、寿司屋Aは載っていましたが、寿司屋Bは載っていませんでした。
さて、どちらの寿司屋を選びますか?

…いかがでしょうか。
どちらかといえば、ミシュランガイドに載っている寿司屋Aを選ぶ人が多いのではないでしょうか。
もちろん寿司屋Bが「隠れた超名店」かもしれませんが、値段が高いだけの「ボッタクリ寿司屋」かもしれません。
その点、寿司屋Aは少なくともミシュランの審査で認められてガイドに載っているわけですから、ボッタクリのような失敗は少なそうですよね。
エビデンスは言わばミシュランガイドのようなもので、目の前のご利用者に対して適切な対応を行うための助けとなります。

ではすべてエビデンス通りにやればよいのかというと、そう簡単にはいきません。
ご利用者と関わる中で、エビデンス通りにいかないことは多くあります。
例えば「歩けば足の筋力は強くなるけど、膝が痛くて歩けない」といったような場合です。
このようなときにご利用者と相談して、エビデンスを考慮した上でご本人にとって最適な対応を考えるのが医療介護従事者の腕の見せどころと言えます。
特に訪問の現場ではエビデンス通りにいかない中で対応を考える機会が多く、そこに魅力があると個人的には思っています。

ただし、上記の例では「歩けば足の筋力は強くなる」がエビデンスにあたるわけですが、この情報がなければ、いくらご利用者の思いを深く理解して寄り添ったとしても、すべてが手探りの対応になってしまいます。
エビデンスは、それだけでは最適な対応はできませんが、ご利用者にとって最適な対応を行うための基礎的な情報として欠かせません。
今の医療や介護は、先人が積み上げた数多くのエビデンスという「情報」に支えられているのです。

また、各種の公的組織、国立病院や公立病院といった公的医療機関からの情報は、専門家が膨大な量のエビデンスをチェックした上で、信頼できると判断された情報に基づいています。
皆様が医療や介護に関する情報を探すときは、まずは信頼できる公的な機関が発信している情報に当たることをおすすめします。

私自身も、エビデンスとご利用者の皆様の思いの両方を大切にして、最適な対応ができるよう精進していきたいと考えています。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!

理学療法士 植嶋