リニエ訪問看護ステーション住之江
作業療法士
摂食・嚥下を学んで感じていること
皆様こんにちは。
リニエ訪問看護ステーション住之江 作業療法士の遠藤です。
今回は摂食・嚥下を学んで感じていることを書かせていただきます。
摂食・嚥下との出会い
私が臨床に入って初めて摂食・嚥下について学んだのは、病院内の言語聴覚士さんによる勉強会でした。
解剖学や嚥下5期(食べ物を認識してから胃に送り込むまでの5段階のこと)の説明、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査の画像を見たり、ゴロ音(気道からガラガラやゴロゴロといった音がすること)を聴診器で聴いたりと、難しく感じるところを楽しく教えていただいたのを覚えています。
しかし、その頃は「どう臨床に活かしていけばいいのか」は、正直ピンときていませんでした。
その後、施設勤務となり、言語聴覚士さんが不在だったため、誤嚥と向き合う機会が増えていき、次は外部セミナーを受けるようになりました。
身体の繋がりから摂食・嚥下を学ぶ
セミナーの講師の先生は摂食・嚥下を専門として全国的にご活躍されている理学療法士さんだったのですが、そちらで学んだのは「体をひとつの繋がりとして捉える視点」でした。
基礎から評価、アプローチまでいろいろ教えていただいたのですが、その中で、すぐに対応できるのが「姿勢」ではないかと思っています。
試しに、ほんの少し顎を上げて、唾液を飲み込んでみてください。
少し、飲み込みにくくなかったでしょうか。
次に座った状態で骨盤を後ろに倒して唾液を飲み込んでみてください。
最後に、体を傾けて唾液を飲み込んでみてください。
※体を傾けると、頭は勝手に平行を保つようになっているので、首が左右非対称になります。
いかがでしたか?
何となく飲み込みにくさを感じていただけましたでしょうか。
身体機能には問題の無い人でも、姿勢が悪ければ飲み込みは難しくなります。
はじめに行った姿勢は誤嚥しやすい状態でもあります。
日常生活でできる摂食・嚥下の工夫
日常生活でわざわざ顎を上げて食べることはないと思いますが。
高齢で背中の曲がった方が食事をするとなると、元々の姿勢が頭を前に突き出した状態なので、正面を向こうとすると顎を上げることになります。
(若い人であっても猫背の方、体幹が緩い方はこういう姿勢になりやすい傾向があります。)
これは、誤嚥しやすい姿勢です。
なぜかというと、喉仏の辺りとオトガイ(顎先)との距離が伸びると、構造として飲み込むことが難しくなるからです。
気管に食べ物が入りやすくもなります。
簡単な対策をひとつ。
「顎を引く」姿勢を作ることができれば、飲み込みは安全で楽になります。
鍵は、「骨盤が後ろに倒れないようにすること」と「姿勢の左右非対称を防ぐこと」です。
骨盤を立てると、自然と頭が背骨の上に乗りやすくなり、顎を引くことができます。
姿勢が左右非対称になると、飲み込むときの喉の動きを邪魔するので、整えることでぐっと安全になります。
骨盤を起こすだけで、頭がよい位置に近づくこともありますし、車椅子をお使いの方は、背張を調整して骨盤を起こしたり、クッション等で体の崩れを予防することで対応することもできますよ!
もちろん、すべての方の問題が解決するわけではありませんが、分かりやすい指標の1つだと思っています。
訪問看護でできる摂食・嚥下サポート
ご紹介した方法の他にも、安全な摂食・嚥下のためにできる姿勢はたくさんあります。
- 体幹を使って身体の軸を支える力を向上させる
- 身体の左右を対称にする(首、鎖骨、体幹、骨盤)
- 肩甲骨の動きや状態を改善する
専門的な話ではありますが、他にもできることはたくさんあります。
- 舌骨上・下筋群のこわばりをほぐす(特に筋緊張が高まりやすい疾患の方)
- 舌骨(喉仏の少し上にある小さな骨)自体の動きを改善
奥の深い分野ですが、体の繋がりを理解している療法士だからこそできるアプローチがあります。
リニエ訪問看護ステーションには、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など、分野のスペシャリストが大勢いるので、ご利用者の身体の状態に合わせ、少しでも安全性を高め、可能性を広げていければ、と感じています。
相談したいことがあれば、気兼ねなくお声がけください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
リニエ訪問看護ステーション住之江
作業療法士 遠藤