リニエ訪問看護ステーション四ツ橋
作業療法士
小児分野の未来を考える
小児分野の後進育成を担う『作業療法士』
こんにちは、株式会社リニエL 広報課 課長の川口です。
先日、「リニエ訪問看護ステーション四ツ橋」に所属する松尾OT(作業療法士)に同行させていただきました。
松尾OTは穏やかで柔らかな物腰と、あふれる優しさが魅力の作業療法士です。
以前は、小児専門の療育センターで9年、リハビリテーションの専門学校で作業療法士養成に22年間、指導者として勤務されていました。小児の『在宅医療の現場』に関わりたいという強い想いから、当社で活躍しています。
現在、松尾OTは現場で多くの子どもたちと関わりながら、小児分野に精通したセラピストが不足している現状を踏まえ、将来的には在宅医療を利用するご家庭が地域間で均等にサービスを受けられる環境を目指して、後進の育成に力を注いでいます。
(セラピストとは、専門的な知識や技術を活用し、心や身体の不調を癒やしたり治療したりする職業のことです。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの国家資格の専門職が該当します)
また、社内外を問わず、小児分野に関する講習や研修を行い、専門的な知識と経験を広く共有しています。
『スタージ・ウェーバー症候群』
今回、同行させていただいたのは、3歳のT君。

神経皮膚症候群の一種で、指定難病に指定されている「スタージ・ウェーバー症候群」のご利用児になります。
「スタージ・ウェーバー症候群」は、脳、皮膚、眼に異常な血管が発生する先天性の病気です。神経皮膚症候群の一種で、指定難病にも指定されています。
症状には個人差があり、T君は生後3ヶ月の時、痙攣発作で左半身に麻痺が発生しました。
リハビリの目的は、主に「左半身の運動機能の改善」と「ご家族の支援」になります。
開始当初、麻痺している影響で自身の左手に気がつかず、右手と同じように指を吸う動作が見られないとお母さんからご相談いただきました。
(そのまま放置すると、左手が硬くなり、日常的に使えなくなるリスクもあったそうです)
松尾OTは初回の訪問で、左手の緊張を緩和し、体幹の動きと連動させながら手の運動発達を促す誘導を行いました。これにより、左手の存在に気づき、左手の指を吸うことができるようになりました。
その後も日常的に指を吸うようになり、この大きな変化にお母さんも大変驚かれたそうです。

現在、T君は3歳になり少し走れるようになりました。手の左右差も気にならなくなったことにお母さんは感謝されているとのことでした。
松尾OTは、長年の経験と技術、そして細やかな心配りをもって、どんな状況にも柔軟に対応します。
そして、目の前の子どもたちを支援するとともに、この経験と技術、そして想いを次の世代へとつなげていくことを大切にしています。
培ってきた知識と技術を後進へと伝え、より多くのセラピストが質の高い支援を提供できるようにすること。それは、子どもたちの未来を支えることにもつながっていきます。
『寄り添う支援』
T君のお母さんに、松尾OTとの関わりについてお話を伺いました。
これまで、T君は入院や通所、在宅サービスを利用する中で、多くのセラピストと関わってきました。
素晴らしい出会いも数多くありましたが、一方で、T君やご家族の想いよりもセラピスト自身の考えるリハビリを優先する場面もあったそうです。
そのような場合、T君はその場を離れたり、時には泣いてしまうことも。
また、無理をさせるとリハビリが進まないまま提供時間が終わってしまうこともあったそうです。
松尾OTは、T君の体調やその日の気分に配慮しながら、無理のないペースでリハビリを進めています。寄り添うことで、お子さんとの信頼関係ができご家族も安心されます。ご家族に対しては、リハビリの内容や進捗について丁寧に説明し、情報共有を徹底しています。
「こどもさんの場合は『自分のことをわかってくれる人』として認識していただくことが大切です。その時々の気分や刺激の許容範囲を表情や動きを観察しながら、繊細に調整する繰り返しの過程でセラピストはこどもさんにとって『自分のことをわかってくれる人』に近づくことができます。
こどもさんの変化を通してご家族も安心されて、本音やご希望を伝えていただけることに繋がり、こどもさんやご家族にとって本当に必要なサポートを提供するための基盤ができます。その上で目標を共有し、プログラム内容や進捗をご家族に理解していただけるような分かりやすい説明を心がけています」と松尾OTは語ります。
松尾OTのその想いに、リハビリや支援の本質が表れていると感じました。
子どもの個性に寄り添ったリハビリは、身体機能の回復や発達を促進するだけでなく、心の成長やご家族に安心感を与える重要な役割を果たしています。在宅という環境を活かして、子どもらが自分らしい生活を送る力を引き出すことができます。
リハビリを通じて子どもの笑顔を増やし、将来への希望を育むサポートをすることが、在宅でのお子さんに関わるセラピストの大きな役割なのだと感じました。
「寄り添う」ということは、人と人との深い繋がりを育む根本的な姿勢です。誰かに寄り添うことで、相手だけでなく自分自身も豊かになるのではないでしょうか。
最後に、
T君は、お母さんの疲れている様子を見るとマッサージをしてくれるそうです。T君には小学生のお姉ちゃんがいて、同じようにマッサージをしてくれるのですが、T君のマッサージには力加減の変化など、まるで松尾OTのハンドリングを身体で覚えているかのような繊細さがあるそうです。
その優しさと技術を活かして、将来、T君が作業療法士を目指し、子どもの笑顔を増やしてくれるかもしれません。知らぬ間に、松尾OTの後進育成が進んでいるようです。

株式会社リニエL 広報課
課長 川口
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