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リニエ訪問看護ステーション岸和田

第57回 日本作業療法士学会 発表-ダウン症児のお母さまの心理的変化

リニエ訪問看護ステーション岸和田の作業療法士、泉浦です。

2023年11月10日~12日に沖縄で開催された、第57回日本作業療法士学会で、一枚の大判の用紙に研究内容をまとめたポスター発表を行いました。

今回、発表したテーマは「ダウン症児をもつ母の心理的変化についてTEM (*)を用いた質的分析―我が子を「可愛い」と言えるまでー」というものです。(*TEM:インタビューや記録などの主観的データをもとに、対象となる個人の社会的・文化的な解釈を深める研究方法)

訪問リハビリで担当させていただいているお子さんのお母さまがある日、「この子のことを今はやっと可愛いと思える」と話されました。その言葉を聞いて、今まで数々の苦悩を強いられてきたのだろうということをすごく感じたのと同時に、なぜそう思えるようになったのだろう?と思いました。

思えば、今までたくさんの親御さんと出会ってきたその中で、自分なりに言葉を選んで関わってきました。でも、ご家族がどんな経験をしてきたのか、どんな思いを巡らせてきたのか、ということを具体的に知る機会はありませんでした。

今、自分の目の前で気丈に振舞っているご家族は、きっとこれまでに数々の複雑な思いや経験をしているはず。誰もが我が子が健康で生まれてきてくれることを願っているはずですし、自分の子に障がい(と呼ばれるもの)や疾患があると告げられた時の気持ちは、経験のない者からすると想像もつかないほど苦しいものだと思います。

その、お母さまが重ねてこられた経験や思いを知ることは、ご家族の気持ちに寄り添うために必要なことだと感じ、自分も含めて多くの人に知ってもらいたいと思って学会で発表することを決めました。具体的には、お母さまから自分の子を可愛いと思えるまでに至った経験についてインタビューし、その経験や心情の変化の過程を分析しました。

発表することを快く引き受けてくださったお母さまでしたが、インタビュー中には涙を流しながら当時を振り返ってくださる場面もありました。本当にたくさんのことを話してくださったお母さまへの感謝を込めて、「たくさんの人たちに伝えてきます!」と気合いを伝えて、私は苦手な飛行機に乗って沖縄に向かいました。

学会当日、予想以上に多くの方々が私のところに話を聞きに来てくださいました。

同じようにインタビューをもとに研究をしている方からは「ここまで具体的な内容はなかなかない」と感想をいただいたり、お子さまに携わる場への就職が決まっているという作業療法士の学生の方は「現場に出る前に大事なことを聞けました」と言ってくれたり。
家族支援の活動をしているフリーランスの方からは、兄弟の支援という別の視点からの意見をいただいて考え方の幅が広がりました。
その他にもたくさんの方々とディスカッションができて、有意義な機会となりました。

今回、私が発表で伝えたかったのは、「障がい受容」という言葉だけでは説明ができないほど、ご家族の気持ちは複雑であるということ。

作業療法(リハビリ)は人と人との信頼関係があって、成り立つものだと思っています。信頼関係を築くためには相手に寄り添うことが大事で、今回のテーマがその手がかりになればいいなと思っています。

今回、研究にご協力いただいたお母さまに心より感謝申し上げます。

 

リニエ訪問看護ステーション岸和田 作業療法士 泉浦