リニエ訪問看護ステーション河内長野
言語聴覚士
言語聴覚士(ST)の取り組み②
リニエ訪問看護ステーション河内長野所属、言語聴覚士の中原です。
私は言語聴覚士として、N様のリハビリを長年担当させていただいています。
N様との出会いから10年以上が経ちますが、その間にたくさんのことを一緒に経験してきました。
言葉が思うように出てこないもどかしさや、利き手の右手が動かしづらいことで感じる不便さ。
それでも、N様は「できることを増やしたい」「もっと上手になりたい」と、常に挑戦を続けています。
手芸との出会い ~ものづくりのたのしさを知る~
言語の集団リハビリで手芸が得意な方から「やってみない?」と声をかけられたことがきっかけとなり、ティッシュBOXやペットボトルカバー作りに挑戦しました。
細かい作業に苦戦しながらも、ひと針ずつ丁寧に仕上げていくことで、完成したときの達成感を味わうようになりました。


その後も「もっといろいろなものを作ってみたい」と意欲的に取り組み、クッション作りにも挑戦しました。
デザインや作り方を自分で考えながら、手芸の楽しさを実感していき、最近では刺繍にも興味を持ち、少しずつ作品の幅を広げています。
手芸がリハビリに ~言葉と手の動きを鍛える時間~
N様にとって、手芸はただの趣味ではありません。
リハビリとしての意味も持っています。 右手が使いにくいため、左手を使うことが増えましたが、それでも「右手をもっと動かせるようになりたい」という気持ちを持ち続け、手芸を通じて手の機能向上にも取り組んでいます。
また、手芸には独特の専門用語があります。
N様は「ステッチ」などの言葉を覚え、私に教えてくださることもあります。
そのやり取りが会話のきっかけとなり、リハビリの中での言葉の引き出しにもつながっています。


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広がる世界 ~卓球・ボッチャ・そして写真~
手芸だけでなく、N様の挑戦はほかにも広がっています。
過去にはハーフマラソンや水泳にも取り組み、今は卓球やボッチャの練習に励んでいます。「上手ではない」と言いながらも、練習を重ねることが楽しく、続けることに意味があると感じておられます。
また、散歩の途中で風景の写真を撮ることも楽しみのひとつ。
道端に咲く花や、何気ない景色を切り取ることが好きで、日々の生活の中に新しい発見を見つけています。


支え合いの時間 ~10年以上の関係から感じること~
N様とはもう10年以上の関係になります。
ご家族も、「何事にもチャレンジする姿、集中している姿を見て嬉しい」とおっしゃっています。
N様ご自身も「ここまで続けてこられたのは、支えてくれた人たちのおかげ」と感謝の言葉を口にされています。
リハビリを通じて、N様が「ひらがなや数字が苦手」と感じたときには、ご自身で「これを課題にしたい」と提案してくれることもあります。
その姿勢からは、「もっとできるようになりたい」という強い意志を感じ、私自身も「中途半端な関わりではいけない」と気が引き締まる思いになります。


これからも、ひとつひとつ丁寧に
N様は、「手芸も、卓球も、ボッチャも、まだまだ下手」とおっしゃいます。
しかし、「もっと上手になりたい」「あわてずに、丁寧に取り組んでいきたい」という前向きな気持ちを持ち続けています。
できることが増える喜び、新しいことに挑戦する楽しさ。
N様の姿は、「どんなことでも、挑戦し続ければ変化が生まれる」ということを教えてくれます。
これからもN様の挑戦を全力でサポートしていきたいと思います。


リニエ訪問看護ステーション河内長野
言語聴覚士 中原 典子